投稿日: 雑記

【書籍紹介】バッタを倒しにアフリカへ

著者 :前野 ウルド 浩太郎
出版社:光文社
発売日:2017/5/17
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概要

アフリカでは、バッタが不定期に大量発生して植物を喰い荒らし、農作物に甚大な被害をもたらす。アフリカのモーリタニアという国でも、サバクトビバッタの大量発生に悩まされている。国内にバッタの研究所はあるものの、大量の殺虫剤を散布するという、効率的とは言えない解決策を取るばかりであった。本書は、前野ウルド浩太郎という研究者が、モーリタニアに身を投じて、サバクトビバッタの大量発生時の行動を研究することで、より効果的なバッタ対策の実現を目指すノンフィクションものである。

「私が人類にとってラストチャンスになるかもしれない」と言える凄さ

ポスドクとしてモーリタニアに来て2年が経過したころ、異例の大干ばつによりバッタが現れずに大きな研究成果が出せないまま、学振の科研費の支援が切れることとなった。このとき前野さんに残された道は二つで、日本に返って大学のポストに就いて給料を貰いながら別の昆虫の研究をするか、モーリタニアに残って無収入でバッタの研究を続けるか、であった。悩んだ末に前野さんはモーリタニアに残ることを決めたのだが、そのときにバッタ研究所の所長に対して、このまま研究所に在籍させて欲しいという思いを伝えた次の言葉が本書の中で最も印象に残った。

日本にいる同期の研究者たちは着実に論文を発表し、続々と就職を決めています。研究者ではない友人たちは結婚し、子供が生まれて人生をエンジョイしています。もちろんそういう人生も送ってはみたいですが、私はどうしてもバッタの研究を続けたい。おこがましいですが、こんなにも楽しんでバッタ研究をやれて、しかもこの若さで研究者としてのバックグラウンドを兼ね備えた者は二度と現れないかもしれない。私が人類にとってラストチャンスになるかもしれないのです。研究所に大きな予算を持ってこられず申し訳ないのですが、どうか今年も研究所に置かせてください。

安定したポストに就いていて、給料を貰いながらモーリタニアへの出向期間を1年延ばすというのではなく、無収入になり、しかも残ったからといって確実に研究成果が出せるかもわからないにも関わらず、残るという選択をした点がまず凄い。また、どんな研究であっても新規性が求められるため、論文を発表するときに「この研究は誰にもやられていなかったことだ」とは言えるが、「この研究は自分がやらなければ、今後人類の誰にも解決できないことだ」とはなかなか言えない。それを現地で、しかもバッタ研究所の所長に向かって行ったところに、前野さんの強い信念を感じた。

まとめ

前野さんは平成26年度に京都大学の白眉プロジェクトに採択されて助教として京都大学に在籍し、現在はつくばの国際農林水産業研究センターに研究員として勤めている。私も同じ時期に京都大学に在籍し、現在はつくばの産業技術総合研究所で研究をしているため、一方的に親近感を覚えつつ本書を読んだ。本書は、研究とは縁が無いが、研究職の魅力と大変さを覗いてみたい、という人にうってつけだと思う。

本書の内容の一部を前野さんが講演している様子をジュンク堂書店のYouTube公式チャンネルから視聴できる(https://www.youtube.com/watch?v=MPeafxFq3Ms)。また、ブログTwitterもあるので、前野さんの最新の動向を知りたい場合はフォローしてみるのも良いかもしれない。


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